ケミカルピーリング

原理

ケミカルピーリングは皮膚を酸などで化学的に融解して、老化角質を剥離・除去し表皮基底細胞を活性化させ、さらに真皮内の細胞を刺激してコラーゲンやエラスチンなどの細胞外基質を産生させて、皮膚の再生を促す治療法です。従って、皮膚の若返り(rejuvenation)治療や皮膚の美容的改善を目的とする治療が期待できるだけでなく、ピーリングによる積極的な角栓剥脱効果もあるため、ざ瘡(にきび)などの治療にも応用できます。しかし臨床研究が先行して基礎研究の裏付けに乏しいため、その詳細な機序については未解明なことも多いのも事実です。
使用される薬剤にはアルファヒドロキシ酸(AHA)、トリクロール酢酸(TCA)、サリチル酸、フェノールなどがあり、治療目的によって適宜選択します。一般的には、AHAやサリチル酸は皮膚表層のピーリングをして表皮角質を剥離除去し、効果はマイルドですが副作用は少ないとされます。TCAやフェノールは皮膚表層から深層までピーリング可能とされ、治療効果も高い反面、黄色人種には副作用(遅い創傷治癒、炎症後色素沈着、遷延性紅斑など)も多いとされます。
また、ピーリングの深度(薬剤の皮膚への浸潤の程度)を決定する主要因は薬剤濃度、pH、接触時間であり、副因子として患者の皮膚状態や部位、基剤などがあるので、ピーリングによる良好な結果を得るためには、術者の適切な手技や熟練が必要です。

ケミカルピーリングの長所

  1. 短時間で広範囲面積を処置できる。
  2. 皮膚表層のピーリングであれば麻酔が不要である。
  3. 治療範囲の辺縁をぼかすことができる。
  4. 治療費が安価である。

ケミカルピーリングの短所

  1. ピーリングの深さがわかりにくく熟練を要する。
  2. 部位によっては均一な深さのピーリングができない。
  3. 高度な角質肥厚がある場合には薬剤が浸透しにくい。
  4. 効果の持続期間が不明な点が多い。

ケミカルピーリングの効果

  1. 皮膚角質が除去されて、皮膚がツルツルになり、化粧のノリが良くなる。
  2. 皮膚の正常な再生・脱落(ターンオーバー)を促進する。
  3. しみ・くすみが薄くなり、小じわが目立たなくなる。
  4. 角栓が除去され、ざ瘡(にきび)・ざ瘡痕を改善する。

治療対象疾患

  1. ざ瘡(にきび)、ざ瘡痕
  2. 肌荒れ、乾燥した皮膚
  3. 肌のクスミ、黒ズミ(毛穴の角栓)
  4. 光老化したシミ(日光性色素斑)、小じわ(皮膚の若返り)
  5. 薄い色素沈着(炎症後色素沈着)
  6. 他の薬剤の浸透性を高める効果(肝斑、雀卵斑など)
  7. 毛孔性苔癬、脂漏性皮膚炎など

当院の使用薬剤

当院で使用するケミカルピーリング用薬剤の一つは、果実など天然に存在する有機酸のAHA(Alpha Hydroxy Acids)に属するグリコール酸および乳酸です。グリコール酸+乳酸(ダブルピーリング)の併用でケミカルピーリングを行います。

治療の流れ

グリコール酸+乳酸のダブルピーリング
1.診察:

化粧を落として治療する皮膚の状態を診察し、使用するピーリング剤の種類と濃度を 決め、施術スケジュールを相談して決めます。通常、3~4週に1回、治療期間は3~4ヶ月が目安です。
※基本的には日光浴愛好者にはケミカルピーリングはお勧めできません。
※皮膚疾患(日光皮膚炎、湿疹、口唇単純ヘルペスの感染症など)を合併している方、ケロイド体質の方、自己免疫疾患のある方、最近顔面の外傷・手術の既往がある方、過去に放射線治療を受けた方、フェイシャルワックス・脱毛剤を使用した方、ステロイドの長期投与されている方は、ピーリングできませんのでご注意下さい。尚、妊娠・授乳中の方は基本的には可能ですが、皮膚が敏感になっていますので、担当の医師とよくご相談下さい。

2.プライミング:

施術1~2週間前より、ある程度の角質や表皮を事前に剥がしてピーリングにおける治療が均一で効果的に行えるように、低濃度のグリコール酸含有ホームケア商品(ジェル、ローション、石鹸など)を毎日外用し始めるのが理想的です。しかし、プライミングをしなくても、直接施術を開始しても問題ありません。
※治療2~3日前から、ハイドロキノンやレチノイン酸クリームの使用はお控え下さい。
※治療1週間前は電気分解療法、顔面マッサージ、ケミカルヘアトリートメントはお控え下さい。

3.施術前日と当日:

顔の剃毛や脱毛、あるいはパックやスクラブ剤の使用は中止し、軽めのお化粧で来院して下さい。
※ピーリング直前に皮膚に炎症や小さな傷があると、その部位のピーリングが深くなってしまうので、施術できなくなります。

4.洗顔:

洗顔が不十分で脂分が残存しているとピーリングの効果が低下するので、化粧を完全に落として十分な洗顔をして下さい。

5.ピーリング開始:

グリコール酸ローションで顔の汚れや皮脂成分を拭き取ります。次に、グリコール酸ジェルを皮膚に刷毛で塗ります。皮膚の発赤状態を確認しながら、約5~10分後に拭き取ります。次に、乳酸添加グリコール酸液を同様に刷毛で塗ります。約5分後にこの乳酸添加液を拭き取り、中和剤を塗布します。この間、疼痛が強い場合は、鎮痛ジェルを塗布します。最後に、保湿剤と遮光クリーム(紫外線非吸収剤製品)を塗って終了です。所要時間は30分程度です。
※ピーリング直後にビタミンC誘導体などの外用薬の超音波イオン導入を同時に行うと経皮吸収が促進されるため、より相乗効果が得られます。
※初回は低濃度から開始して、適宜濃度の上昇、接触時間の延長を行ってピーリング効果を高めます。黄色人種では、高濃度でのピーリングは、発赤・水疱・灼熱痛・色素沈着などの副作用も出現しやすいので注意が必要です。

6.後療法:

施術後よりすぐ化粧は可能ですが、施術後12時間は、洗顔・洗髪・化粧は控え、紫外線に当たらないようにして下さい。また、皮膚を強く擦らないようにしてください。
施術後1週間以内は、表皮が持つ本来のバリア機能や水分保持機能が低下して乾燥しやすく、さらに紫外線に敏感となるため直射日光をできるだけ避けて、保湿剤と遮光クリーム(紫外線非吸収剤製品)を必ず毎日使用して下さい。また、刺激性の高い化粧品・美白剤(ハイドロキノン、レチノイン酸など)・スクラブ剤などの使用、パック、垢すり、サウナ、髪のパーマ、毛染め、プール・温泉などは控えて下さい。
施術後1週間以降は日常生活の制限は無く、遮光クリームを継続しながら通常の化粧品・美白剤の使用を開始してかまいません。適宜、ピーリング効果の維持と次回の準備をします。また、ざ瘡(にきび)では自宅での後療法を適切に行うと、治療期間の短縮が図れます。
尚、1ヶ月以内に他の治療(脱毛治療や他のケミカルピーリングなど)をしないよう注意して下さい。

副作用:1%未満であると考えられており、下記にその内容を列挙します。

紅斑

施術数時間後~数日間生じることがありますが、自然に消失します。

色素沈着・脱失

皮膚深部にまでピーリング剤が浸透して、過度の炎症を生じた場合に起こります。施術側の原因としては、ピーリング剤の高濃度、pHの変化、接触時間の延長や、ピーリング剤の除去と中和の不十分などによって生じることがあります。ピーリング施術中、皮膚に違和感を生じた場合は、遠慮せずにその旨をお申し付け下さい。患者側の因子としては、皮膚表面の微小な傷(産毛・脱毛処理や髭剃りによる傷、スクラブ剤の使用など)、皮膚疾患治療、日焼け後、体調不良などによって色素沈着が生じる場合があります。対処法としては、色素沈着部位にはピーリングを行わず、美白剤の外用を行います。

ざ瘡(にきび)の一時的増悪

ピーリング施術後5~7日後に増悪することがありますが、一過性で治療により軽快してきます。

瘢痕

稀ですが、肥厚性瘢痕やケロイドが生じることがありえます。

ウィルス・細菌感染

極めて稀です。帯状疱疹や口唇ヘルペスが発症した場合はピーリングを控えて、坑ウィルス薬の内服を開始します。細菌による二次感染の場合は抗菌薬投与になります。

痂皮(かさぶた)形成

グリコール酸ピーリングでも時に部分的な痂皮が生じることがありますが、自然に脱落します。

※ケミカルピーリングは医療行為として、厚生省から医療機関でのみ行うよう、通達されています。万が一副作用が生じても、迅速な治療が行なえる医療機関であれば安心です。ピーリングは信頼できる医療機関にご相談下さい。

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